
一般社団法人 全日本執事協会
ALL JAPAN BUTLER ASSOCIATION
明治23年の発足から数えて135年。執事を育て、技能を測り、認定するという仕事を担ってきたのがこの協会です。アカデミーの教室で交わされる一礼も、修了後に受ける試験も、すべてこの団体が定めた基準を土台にしています。学ぶ側の視点から、協会という組織を読み解きます。
WHAT IT IS
執事の「ものさし」を預かる団体
The keeper of the standard
公的な免許がない職業
執事という仕事には、国家資格のような公的な免許がありません。だからこそ、誰が執事を名乗れるのか、どの水準に達していれば一人前と言えるのかを決める「ものさし」が要ります。明治23年、すなわち1890年に創立者・田中慎吾が立ち上げたこの団体は、その物差しを預かり、135年にわたって更新し続けてきた組織です。
英国の流儀を、日本の家に合わせる
田中慎吾は英国に学び、向こうの館で受け継がれてきた執事の流儀を持ち帰りました。ただし、それをそのまま日本に移植したわけではありません。西洋の給仕作法に日本の礼節を重ね、日本の暮らしに合う執事像を一から組み立てる。この編集作業こそが協会の出発点であり、いまアカデミーの教科書に載っている所作の多くは、ここに源をもっています。
アカデミーは「基準を教える場」
受講を考えている方に最初に知っておいてほしいのは、アカデミーが「協会の基準を教える場」だという点です。授業の到達目標、実技試験の採点、修了後の認定。どれも協会が決めた枠組みの中にあります。協会を知ることは、自分がこれから何を目指して学ぶのかを知ることと同じです。
掲げている使命
執事の職業意識と心構えを世の中に広め、接客業全体の水準を引き上げること。協会はこれを自らの役目としています。
思い描く将来
執事が敬意をもって迎えられる専門職として定着し、さまざまな場で働いている社会。アカデミーが「基準で評価される専門職に」と掲げる理念は、この将来像の教育版だと言えます。

FOUR CHAPTERS
創立・分立・再統合・法人化——四つの章で読む沿革
135 years in four chapters
協会の歩みは平坦ではありませんでした。意見が割れて二つに分かれた時代があり、それをまとめ直した世代があり、そして法人として体制を整え直した最近の章があります。アカデミーで教わる「全国共通の基準」は、この四つの章を通り抜けて残ったものです。
- 01
第一章——明治の創立と、最初のカリキュラム
文明開化のただなかで田中慎吾が協会を興し、日本で初めての体系立った執事養成の課程を開きました。英国から指導者を招き、向こうの給仕作法と日本流の礼儀を一つの教程にまとめたのがこの時期です。
- 02
第二章——1955年、東西に分かれる
育て方の方針をめぐって意見が割れ、協会は関東と関西の二つに分かれました。それから四十年あまり、東西はそれぞれのやり方で執事を育て、土地ごとの基準を築いていきます。
- 03
第三章——2000年、二代目頭取のもとで一つに
二代目頭取・山田和彦が東西の作法を一つずつ突き合わせ、2000年に再び一つの全国組織に戻しました。このとき生まれたのが、地域を問わず通用する品質基準と教育の仕組みです。アカデミーの三つのコースが依拠している「共通の物差し」はここから始まります。
- 04
第四章——2023年からの新章と、2025年の法人化
2023年、石井裕一(執事ベル)が頭取となり、在籍執事の名簿を公開し、料金の見える化と、紹介なしでも相談できる窓口づくりに踏み切りました。2025年2月19日には一般社団法人として登記し、石井裕一が代表理事に。同じ年、協会は創立から135年の節目を迎えています。

FIVE FIELDS
協会が手がける五つの領域
What the association actually does
協会の仕事は「育てる」「認める」「伝える」「つなぐ」「残す」の五つに分けて考えると理解しやすくなります。アカデミーはこのうち「育てる」を教室の形で引き受け、修了生は「認める」を経て社会に出ていきます。

育てる——研修と実地の稽古
基礎の所作から専門的な技術までを段階的に積み上げる研修課程を運営。お台場の執事サロンを稽古場として、身体で覚える教育を続けています。アカデミーの授業も同じ稽古場の延長にあります。

認める——三段階の資格と専門資格
技能の到達度をアソシエイト、プロフェッショナル、マスターの三段に分けて認定。これに加えて食事、旅行、ビジネスマナーといった分野別の専門資格も用意されています。試験は各地の主要都市で定期的に開かれ、筆記と実技の両方で判定されます。

伝える——企業・個人向けのセミナー
リーダーシップ、ホスピタリティ、コミュニケーションといったテーマで、企業や個人に向けた実践講座を開いています。執事の立ち居振る舞いを、接客業や企業の現場で使える形に翻訳して届ける仕事です。

つなぐ——海外との交流
海外からの来客に対応できる執事を育て、世界の執事文化と行き来する窓口を開いています。国際的に通用する執事を送り出すことも、協会が掲げる目標のひとつです。

残す——出版と発信
書籍や刊行物、SNS、YouTubeの「執事ベル」を通じて、執事文化の現在を記録し、社会に向けて発信しています。Gakkenから出た『執事のマナーと教養図鑑』の監修も、この領域の仕事です。

届ける——執事サービスの運営
協会自身が「THE BUTLER」という執事サービスを運営し、数時間の付き添いから長期の契約まで、家庭と法人の両方に執事を届けています。アカデミーの修了生が実際に働く現場です。
THREE TIERS
三段の資格が、そのまま学びの階段になる
Associate / Professional / Master
段階ごとに測るための仕組み
協会の資格制度は、執事の知識と技能を段階ごとに測るための仕組みです。厳しい基準で公平に判定することで、業界全体の水準を底上げし、執事という専門職の輪郭をはっきりさせることを狙いとしています。
三段の階段は、コース設計と重なる
アカデミーにとって大切なのは、この三段の階段がコース設計とそのまま重なっていることです。エッセンシャルはアソシエイトを、アドバンスはプロフェッショナルを、マスターは同名の最上位資格を見据えて組まれています。受講生は、自分がいまどの段にいて、次の段に上がるには何が足りないのかを、協会の基準に照らして具体的に確かめられます。
試験は筆記だけでは終わらない
試験は年に何度か主要都市で行われ、筆記だけでなく実技も課されます。教室で何度も繰り返す紅茶の給仕やトレイの運び方は、単なる稽古ではなく、この実技試験で問われることそのものです。

HOW IT RUNS
登録講師と専門家が支える運営
People behind the association
責任者が横につながる運営
協会の運営は、分野ごとの責任者が横につながる形で進められています。全体の方針を決め、国内外の関係機関との窓口を務めるのが代表理事。それを補佐して各事業の調整や監督にあたるのが副理事長です。
日々を動かす四つの仕組み
日々の活動を動かしているのは、登録講師の仕組み、外部の専門家による助言、海外の団体との提携、そして業務委託の体制です。アカデミーで教壇に立つ講師陣も、この登録講師の枠組みの中で協会の基準を共有しています。どの教室で誰に習っても同じ水準の指導が受けられるのは、そのためです。
活動の四本柱と、教室の位置
活動の柱は四本。資格の認定、教育と研修の課程、会員に向けた支援、そして調査と研究です。アカデミーは二本目の柱を担う教育機関であり、修了生は会員支援や研究の成果に触れながら、執事としての経験を重ねていきます。





THE SALON
お台場に構える、古城の一室のような執事サロン
Headquarters in Odaiba
本部はお台場の青海に
本部は東京・お台場の青海にあります。東京湾を見渡す、海外からの来客も多い一角です。ここに協会は、中世ヨーロッパの城の一室を思わせる内装の事務所を置き、「執事サロン」と呼んでいます。
見学室ではなく、稽古のための空間
サロンは見学のための展示室ではなく、稽古のための空間です。銀器の並べ方、紅茶を注ぐ角度、来客を迎える立ち位置。教科書で読んだことを、本物の家具や調度に囲まれて身体に覚え込ませる。アカデミーの受講生が実技を磨く教室も、この場所です。
訪問は事前予約から
訪問は事前予約が必要です。資格や協会について相談したい方は、まず連絡を入れてから足を運んでください。
所在地
〒135-0064 東京都江東区青海2丁目7−4
連絡先
03-6824-4086(見学・来訪はすべて予約制)

WHY WE INTRODUCE IT
学びの場から見た、協会という存在
The association, seen from the academy
運営母体としての協会
アカデミーは協会を運営母体とする教育機関です。三つのコースは三段の資格に対応し、修了生は協会の認定を受けてから執事として働き始めます。もし協会の基準がなければ、アカデミーの授業は「何のために練習しているのか」を失ってしまいます。
理念を、教室の言葉に置き換える
見方を変えれば、アカデミーは協会の理念を教室の言葉に置き換える場所でもあります。「執事の心構えを社会に広める」という抽象的な使命は、扉を開ける角度や、トレイを持つ高さといった、目に見える形になって初めて受講生に届きます。その翻訳を毎日行っているのがアカデミーです。
入学前に、まず協会を知る
入学を検討している方には、まず協会がどんな団体で、どんな基準で執事を認めているのかを知っていただきたい。公式サイトには沿革、資格制度、活動の詳細が載っています。そのうえでアカデミーのコース案内に戻ってくると、授業の一つひとつの意味が違って見えるはずです。

マスター段階のリーダーシップを示す一場面(協会サイトの画像)
AT EACH STAGE
入学前・在学中・修了時・修了後——協会との四つの接点
Four touchpoints for learners
協会とアカデミーの関係を、受講生の時間軸に沿って並べ直しました。自分がどの段階で協会と関わることになるのかを、あらかじめ思い描いておいてください。
入学前——基準を知る
協会の資格制度と使命を読んでおくと、コース案内に書かれた到達目標の意味が分かります。入学相談の前に、公式サイトの「協会について」を一度眺めてみてください。
在学中——基準で稽古する
各コースの授業は協会の認定基準を逆算して組まれています。講師が「ここは試験で見られる」と言う箇所は、協会の採点項目そのものです。
修了時——基準で測られる
筆記と実技の試験を受け、協会から認定を受けます。認定証は、学んだ技能が第三者の基準に達していることの証明になります。
修了後——基準のもとで働く
協会が運営する執事サービスをはじめ、家庭や法人の現場で、認定を受けた執事として仕事を始めます。基準は働き始めてからも、自分を測り直す物差しであり続けます。
GLOSSARY
協会の言葉を、教室の言葉に置き換える
Four terms you will hear in class
協会のサイトに出てくる言葉は、アカデミーの授業でもそのまま使われます。入学前に意味をつかんでおくと、講師の説明が聞き取りやすくなります。

頭取
協会の長の呼び名です。法人としての肩書は代表理事で、いまは石井裕一(執事ベル)が務めています。授業で「頭取」と言えば、この人を指します。

認定
協会が技能を測って認める仕組みのこと。三段階の資格と分野別の専門資格があり、アカデミーの各コースは前者に対応しています。

執事サロン
お台場・青海の本部に設けられた、古城の一室を思わせる稽古場です。アカデミーの実技もここで行われます。見学は予約制。

基準
協会が公開している執事の行動規範のこと。所作、身だしなみ、守秘、危機対応といった項目ごとにまとめられており、授業の到達目標の根拠になっています。
READING THE SITE
公式サイトは、この順番で読むと迷わない
A reading order for prospective students
協会の公式サイトは情報量が多く、初めて開くと何から読めばよいか迷います。アカデミーの入学相談では、「協会について」→「沿革」→「資格認定」→「基準」の順で読むことを勧めています。団体の成り立ちを知り、次に自分が受ける試験の枠組みを知り、最後に日々の行動規範を確かめる、という順番です。
沿革のページには、創立から法人化までの節目が年表で並んでいます。ここを先に読んでおくと、なぜ全国共通の基準が2000年から始まるのか、なぜ2023年に名簿が公開されたのかが、時系列でつながります。
資格認定と基準のページは、授業で講師が「ここは試験で見られる」と言う箇所の出典です。受講中に何度も戻ってくることになるので、ブックマークしておくことを勧めています。

FROM THE INSTRUCTORS
講師が協会をどう見ているか
The association through an instructor eyes
アカデミーの講師陣は、協会の登録講師の枠組みの中で教えています。彼らにとって協会は「上の組織」というより、自分たちが教える内容の出どころです。授業で使う所作の一つひとつに、協会の基準という裏づけがあるからこそ、講師は迷わず教えることができます。
講師がよく口にするのは、「基準があるから厳しくできる」という言葉です。個人の好みで採点するのではなく、協会が定めた項目に照らして評価する。受講生にとっても、何を直せば合格に近づくのかがはっきりします。
一方で講師は、基準が「上限」ではなく「下限」であることも強調します。協会の基準を満たすことは出発点であり、その先の工夫や気配りは、現場で一人ひとりが積み上げていくものです。

COMMON MISREADINGS
よくある取り違えを、先に解いておく
Common misreadings about the association
第一の取り違えは、「協会が学校である」というものです。学校はアカデミーで、協会は基準を定め、認定し、執事サービスを運営する団体です。入学の申し込みはアカデミーへ、資格試験の要項は協会へ、と窓口が分かれています。
第二は、「資格を取れば自動的に協会の執事として働ける」という理解です。認定は技能の証明であって、就業の約束ではありません。協会が運営する執事サービスで働くには、認定を受けたうえで別途の手続きが要ります。
第三は、「協会は昔からずっと一つの組織だった」という思い込みです。実際には東西に分かれていた四十年あまりがあり、2000年に再統合されています。この歴史を知っていると、全国共通の基準の重みが違って見えます。

THE STANDARD IN PRACTICE
「基準」という一文が、採点表に降りてくるまで
How a written standard becomes a grade
文章のままでは教室で使えない
協会が定める基準は、文章のままでは教室で使えません。アカデミーが最初にするのは、その一文を、誰が見ても同じ判定になる形にほどく作業です。たとえば「静かに運ぶ」という一語は、足音、盆の高さ、視線の置き方、卓に触れる瞬間の速さという四つの見どころに分けて、はじめて講師が同じ目で見られるようになります。
見どころが、そのまま稽古の順番になる
ほどいた見どころは、そのまま稽古の順番になります。一度に全部を直させると受講生は動けなくなるので、今日は足音だけ、次は盆の水平だけ、と一つずつ渡していきます。四つがそろった日に、その所作はようやく基準を満たしたと判断する。採点表は、この積み上げを記録しておくための紙にすぎません。
合格線が講師で動かない利点
基準を持つ団体が教室の外にあることの利点は、その日の講師の好みで合格線が動かない点にあります。担当が替わっても期が替わっても、見る場所は同じ。受講生には「誰に習っても同じところを見られる」という安心になり、教える側には、自分の癖を持ち込まないための歯止めになります。

全日本執事協会の公式サイト
沿革の詳細、資格制度の要項、会員向けの案内、見学や取材の申し込みは公式サイトで。アカデミーの受講相談は、当サイトのお問い合わせからどうぞ。
butler-association.jp — リンク先は別サイトです(別ウィンドウで開きます)
FAQ
よくある質問
Questions and answers
協会が運営母体で、アカデミーはその教育部門にあたります。授業の到達目標や修了後の認定は、すべて協会の基準に基づいています。
1890年(明治23年)の創立で、2025年に135年を迎えました。同じ2025年の2月19日に一般社団法人として登記されています。
アソシエイト、プロフェッショナル、マスターの三段階です。加えて食事・旅行・ビジネスマナーなど分野ごとの専門資格があります。
主要都市で定期的に実施され、筆記と実技の両方で判定されます。アカデミーの実技稽古は、この試験を前提に組まれています。
東京都江東区青海2丁目7−4の本部は予約制です。見学や相談を希望する場合は、03-6824-4086 に事前に連絡してください。
はい。協会はリーダーシップやホスピタリティをテーマにした企業向け講座を開いています。アカデミーの法人研修と併せて検討できます。
はい。協会の公式サイトで公開されており、アカデミーの授業でも到達目標の根拠として参照します。入学前に一読しておくと、授業の意図がつかみやすくなります。
協会は会員向けの支援を活動の柱の一つとしています。内容と手続きは協会の公式サイトで案内されており、アカデミーの窓口では扱っていません。
最終更新: 2026年9月18日





